ベストセラー『リスク―神々への反逆』の著者、バーンスタインによる最新の話題作。人類の経済活動の歴史を、金(ゴールド)という視点から考察し、現代に生きる我々に示唆を与えてくれる。 王侯が名誉のために金を求めた古代エジプトやギリシャ、ローマの時代に始まり、略奪により金銀や金鉱を手に入れたアラブの時代、黒死病により金と人口のバランスが崩れた14世紀、金鉱を求めて始まった大航海時代、ボダンによりマネタリズム思想が萌芽した16世紀と続き、そこから金本位制、IMF体制に至るまでの経済の歴史へと引き継がれる。貨幣の進化の過程における時代背景や人々の価値観などが生き生きと描かれている。さすがバーンスタインだ。 本書は貨幣史や経済政策の本としても受け取れるが、個人が投資する際、あるいは賢い資産運用をする際のヒントとしても受け取れる。金を掘り当てた人がお金持ちになる、所変われば金の価値も変わる、使える範囲と信頼性によって通貨の価値が変わることなどは、一見すると当たり前のようだが、資産運用あるいはビジネスの根本となる考え方である。アジアに金が蓄積された理由の説明として高度経済成長期の日本の状況を引用し、「日本人は外出したり海外からの輸入品に使ったりするよりも、お金を貯蓄し、財産を蓄積するほうを好む」という見方には疑問点が残るが、全体的には綿密な研究・調査と鋭い洞察に基づいている。金と人間のかかわりを描いた歴史ドラマとして、また経済書としても楽しめる。(土井英司)
GOLDの金融史
『リスク』で一躍時の人となったピーター・バーンスタインが贈る 「もうひとつの金融史」第二弾とも言える著書である。 通史と言うよりはエピソードを積み重ねて、その時代時代の雰囲気を 連ねていくという形式を採っている。ニクソンショックでブレトンウッズ体制が崩壊して久しく GOLDを単なる商品の一つとしか見ていない21世紀において GOLDが神聖・絶対なものであったという史実・概念は やや古めかしく聞こえるし、また金本位制のシステムなど 今日ではわかりにくい金融概念が頻発することから 『リスク』に比べてブレイクしなかったのも仕方がないことなのだろう。 それでも金本位制の時代、約百年分の記述には 本書の後半半分が割かれており、秀逸である。
経済史概観としてはベストの一冊
確かにローカルな話題、極東の日本についてなどは誤った記述が散見される。しかし、この本の価値は、欧米を中心とした金(きん)などの貴金属と通貨、そこに見出される富、権力といった経済活動の数千年の歴史を追いかけた大著である、ことにある。インフレ、デフレなどの原因について明らかにはしていなくても、金にまつわるそれぞれの時代の状況は可能な限り描かれている。 世界経済から欧米の動きを無視するわけにいかない(というより、日本はメジャープレーヤかどうか怪しいと思う)以上、金と通貨について、彼らがかつてどのようなことを考え、どういう行動に走ったかについて、お金の動き方に興味のある方は一度は読んでおいたほうがよいのではないだろうか?大学の経済史の授業二年分の価値はあります。
知らないんだったら書かなきゃ良いのに
欧米に関する記述は非常に面白いし、そこだけ読んでいる分には良いんですけどね。止せば良いのにわざわざ1章立てて、アジアのことなんか書くもんだから、こちら方面の歴史は植民地時代の子供用歴史書程度の知識しかないことがばれてしまう。曰く、アジアには言うほどの貨幣制度はなかった、17世紀にアジアに銀が大量に流入したが単に隠匿されただけで、何の役にも立たなかった云々。江戸時代の日本で、西の銀本位、東の金本位という2つの貨幣制度が共存していたなんて高校の教科書にも出るような常識だし、17世紀の中国の経済発展が大量の銀の流入によりファイナンスされたってのも、かなり常識になっているはずですけどねー。元々完全な歴史じゃないって断っているんだから、知らないことは書かなゃ良いのに、惜しい。(実際イスラム圏に関する記述は一言もないんだから)
「きん」と「カネ」をめぐる歴史
希少であり保存にすぐれた「きん」は長い歴史のなかで「カネ」として機能してきました。今では「きん」は石油や砂糖や大豆と同様の商品として扱われているようですが、金属そのものの特性やそれをめぐる歴史によって、たくさんの人々を魅了し続けています。著者は人類と「きん」とのかかわりの歴史を通して、「きん」そのものにこだわる人々に注意をうながしているように思いました。なにが価値あるものなのか、本当に大事なのはなんなのか、そんなことを考えさせられる興味深い内容です。 日本人の貯蓄観について書かれている箇所があるのですが、「一般的な欧米の人たちは、我々をこのようにみているんだな」と思わせるような表現がありました。少し違和感がありますが、それも新しい発見でした。
「きん」と「カネ」をめぐる歴史
希少であり保存にすぐれた「きん」は長い歴史のなかで「カネ」として機能してきました。今では「きん」は石油や砂糖や大豆と同様の商品として扱われているようですが、金属そのものの特性やそれをめぐる歴史によって、たくさんの人々を魅了し続けています。著者は人類と「きん」とのかかわりの歴史を通して、「きん」そのものにこだわる人々に注意をうながしているように思いました。なにが価値あるものなのか、本当に大事なのはなんなのか、そんなことを考えさせられる興味深い内容です。 日本人の貯蓄観について書かれている箇所があるのですが、「一般的な欧米の人たちは、我々をこのようにみているんだな」と思わせるような表現がありました。少し違和感がありますが、それも新しい発見でした。
日本経済新聞社
リスク〈上〉―神々への反逆 (日経ビジネス人文庫) 証券投資の思想革命―ウォール街を変えたノーベル賞経済学者たち 世界金融恐慌序曲~危機管理の資産運用~ 市場リスク 暴落は必然か バブルの歴史―チューリップ恐慌からインターネット投機へ
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